東松島市宮戸地区の奥松島果樹生産組合いちじくの里は8月5日、東日本大震災の津波被害を受けた農地で栽培していた桃を収穫し、地元市場に初出荷しました。2016年4月に植えた140本の木に着果した約9000個のうち、約6000個を市場やJA農産物直売所に出荷するほか、地元住民に直売し、本格的に「奥松島の桃」がデビューしました。
桃の栽培は、県と市、JA、地域農業者が取り組む「奥松島地域営農再開実証プロジェクト」の一環。津波被害後に水稲栽培が難しくなった水田を県が汎用水田として造成後、農地を守るとともに新たな地域特産にしようと2016年から60㌃で桃を栽培します。福島県の桃農家の指導を受け、剪定(せんてい)や消毒などの管理を行ってきました。
昨年は猿などの食害で着果した桃の7割以上が被害を受けたため、電気柵や魚網で害獣対策を行いました。効果は良好で、食害はほとんどなく、昨年の10倍の着果数を確保できました。
収穫には同組合員とJAなどの関係者ら35人が参加。しっかりと色づいた桃を一つ一つ丁寧に収穫し、その場で糖度を計測。糖度15度以上と非常に高品質に仕上がり、組合員は「やっと目に見える成果が出てきてうれしい。これからのやりがいになる」と話しました。
同組合の尾形善久組合長は「大勢の皆さんの助けが合ってここまで来られた。主産地に負けない立派な桃を作りたい」と話しました。
今後は、地元住民向けの直売や、JA農産物直売所での販売、地元の子どもを対象とした収穫体験も行う考え。尾形組合長は「桃を新たな特産品として定着させ、収穫体験などで農業の魅力に触れた子どもの中から『桃を育てたい』と思ってくれる子がいればうれしい」と思いを語ります。
収量は今後、年々増えていく計画。来年以降は観光農園としての経営も視野に入れ、観光客の周知にも尽力していきます。